【簿記3級】第2問(補助簿の記入先)模範解答と解説
2025年10月14日 に公開
物語:こぐま商会の朝
森の商店街の朝。
こぐま商会の店先で、こぐまさんが大きな帳簿を前に頭を抱えていました。
🐻こぐまさん:「うーん、現金出納帳に書いたけど、これでいいのかな…?」
🐱ミーヤ:「帳簿っていっぱいあるよね。“補助簿”って何種類あるの?」
🐧ペンリー:「いい質問です。補助簿は取引をより詳しく記録するためのノートです。大きく分けて3つのグループに分かれます。」
| 種類 | 主な補助簿 | 役割 |
|---|---|---|
| 出納帳グループ | 現金出納帳・当座預金出納帳 | 現金や預金の出入りを記録 |
| 手形帳グループ | 受取手形記入帳・支払手形記入帳 | 手形の受取・支払を記録 |
| 得意先・仕入先グループ | 得意先元帳・仕入先元帳 | 掛売・掛仕入の相手先別管理 |
| 取引内容グループ | 仕入帳・売上帳・商品有高帳 | 商品の売買や在庫の記録 |
🐧ペンリー:「今日は、これらの補助簿をどんな取引に使うかを、こぐま商会の一日を通して確認していきましょう。」
🐻こぐまさん:「なるほど、種類ごとに役割が違うんだね。やってみよう!」
こぐま商会での一日
🐧ペンリー:「では、今日の取引を順番に見ていきましょう。実際の補助簿と仕訳を確認します。」
① リーフ商店との仕入
🐻こぐまさん:「リーフ商店から商品を28万円仕入れたよ。2万円をその場で払って、10万円は手形を振り出し、残りは月末払いにしたんだ。」
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入 | 280,000 | 現金 | 20,000 |
| 支払手形 | 100,000 | ||
| 買掛金 | 160,000 |
🐧ペンリー:「仕入帳、仕入先元帳、支払手形記入帳、商品有高帳に記録します。」
② ブラン支店への販売
🐻こぐまさん:「ブラン支店に商品540,000円を販売したよ。380,000円は手形を受け取り、残りは月末入金。発送費1,200円は現金で払った。」
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 受取手形 | 380,000 | 売上 | 540,000 |
| 売掛金 | 160,000 | 現金(発送費) | 1,200 |
🐧ペンリー:「売上帳・得意先元帳・受取手形記入帳・現金出納帳・商品有高帳が関係します。」
③ 現金過不足の原因発見
🐱ミーヤ:「あれ?現金が帳簿より48,000円少ない!」
🐧ペンリー:「調べたら、モス商会への支払い55,000円と、手数料受取7,000円の記入漏れでした。
現金過不足で処理していたから、原因が分かった今は現金勘定じゃなく“現金過不足”を使って直します。」
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 買掛金 | 55,000 | 受取手数料 | 7,000 |
| 現金過不足 | 48,000 |
🐧ペンリー:「現金出納帳は触らずに、現金過不足勘定を調整します。
買掛金は仕入先元帳、手数料は収益取引なので補助簿なしですね。」
④ スカイ商会からの入金
🐻こぐまさん:「スカイ商会から、以前の売掛金580,000円を小切手でもらったよ!」
🐧ペンリー:「小切手は現金ではなく当座預金です。当座預金出納帳と得意先元帳に記入します。」
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 当座預金 | 580,000 | 売掛金 | 580,000 |
⑤ ミントカフェからの返品
🐱ミーヤ:「前に頼んだカゴが違ってたみたい。16,000円分返品したい!」
🐻こぐまさん:「もちろん!」
🐧ペンリー:「売上帳・得意先元帳・商品有高帳で処理します。」
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売上返品 | 16,000 | 売掛金 | 16,000 |
チャレンジ:試験形式でやってみよう
ここまでのストーリーをもとに、実際の簿記3級・第2問の形式で練習してみましょう。
該当する補助簿の欄に「⭕️」を記入してください。
問題文
こぐま商会では、主要簿のほかに次の補助簿を使用している。
次の1〜5の各取引について、どの補助簿に記入されるかを表の該当欄に「⭕️」をつけなさい。
該当しない補助簿の欄には何も記入しないこと。
【使用している補助簿】
現金出納帳/当座預金出納帳/受取手形記入帳/支払手形記入帳/得意先元帳/仕入先元帳/仕入帳/売上帳/商品有高帳
【取引】
①
リーフ商店から商品280,000円を仕入れ、内金20,000円を控除した残額のうち、100,000円は約束手形を振り出し、残額は月末に支払うことにした。
②
ブラン支店に商品540,000円を販売し、代金として同社振出の約束手形380,000円を受け取り、残額は月末に受け取ることにした。
なお、当社負担の発送費1,200円を現金で支払った。
③
現金の実際有高が帳簿残高より48,000円不足していたので現金過不足勘定で処理していたが、
原因を調査したところ、本日モス商会への買掛金支払額55,000円と手数料受取額7,000円の記入漏れであることがわかった。
④
スカイ商会に対する掛売上代金580,000円を、同社振出の小切手で受け取った。
⑤
ミントカフェに掛けで販売した商品のうち、品違いであったため16,000円の返品を受けた。
解答欄
| 取引 | 現金出納帳 | 当座預金出納帳 | 受取手形記入帳 | 支払手形記入帳 | 得意先元帳 | 仕入先元帳 | 仕入帳 | 売上帳 | 商品有高帳 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ① | |||||||||
| ② | |||||||||
| ③ | |||||||||
| ④ | |||||||||
| ⑤ |
🐧ペンリー:「さて、どの取引がどの帳簿に入るでしょう? 上の物語を思い出して、じっくり考えてみましょう。」
エピローグ
🐻こぐまさん:「なるほど、取引によって使う帳簿が違うんだね。これは整理しないと…!」
🐱ミーヤ:「“どんなお金を、誰と、どう動かしたか”を意識すれば自然と選べそう!」
🐧ペンリー:「その通り。補助簿は、取引の足跡を残す森のノートなんです。」
模範解答と解説
| 取引 | 現金出納帳 | 当座預金出納帳 | 受取手形記入帳 | 支払手形記入帳 | 得意先元帳 | 仕入先元帳 | 仕入帳 | 売上帳 | 商品有高帳 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ① | ⭕️ | ⭕️ | ⭕️ | ⭕️ | |||||
| ② | ⭕️ | ⭕️ | ⭕️ | ⭕️ | ⭕️ | ||||
| ③ | ⭕️ | ⭕️ | |||||||
| ④ | ⭕️ | ⭕️ | |||||||
| ⑤ | ⭕️ | ⭕️ | ⭕️ |
ポイント解説(取引ごと)
① リーフ商店との仕入
問題文
リーフ商店から商品280,000円を仕入れ、内金20,000円を控除した残額のうち、100,000円は約束手形を振り出し、残額は月末に支払うことにした。
仕訳
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 仕入 | 280,000 | 現金 | 20,000 |
| 支払手形 | 100,000 | ||
| 買掛金 | 160,000 |
解説
- 手形支払 → 支払手形記入帳
- 掛残 → 仕入先元帳
- 仕入取引 → 仕入帳
- 商品増加 → 商品有高帳
② ブラン支店への販売
問題文
ブラン支店に商品540,000円を販売し、代金として同社振出の約束手形380,000円を受け取り、残額は月末に受け取ることにした。
なお、当社負担の発送費1,200円を現金で支払った。
仕訳
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 受取手形 | 380,000 | 売上 | 540,000 |
| 売掛金 | 160,000 | 現金 | 1,200 |
解説
- 手形受取 → 受取手形記入帳
- 掛残 → 得意先元帳
- 商品販売 → 売上帳
- 商品減少 → 商品有高帳
- 発送費支払 → 現金出納帳
③ 現金過不足の原因発見
問題文
現金の実際有高が帳簿残高より48,000円不足していたので、いったん「現金過不足」として処理していた。
調査の結果、モス商会への買掛金支払55,000円と、手数料受取7,000円の記入漏れであることがわかった。
仕訳
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 買掛金 | 55,000 | 受取手数料 | 7,000 |
| 現金過不足 | 48,000 |
解説
- 「現金過不足で処理済み」のため、現金勘定は使わず、現金過不足勘定で原因を修正する。
- 買掛金支払の記入漏れ(本来:現金減少)は 借方:買掛金、
手数料受取の記入漏れ(本来:現金増加)は 貸方:受取手数料 で補う。 - 現金過不足の差額48,000円を貸方で消して、帳簿残高と実際有高を一致させる。
- 関連補助簿:
- 買掛金 → 仕入先元帳
- 手数料受取 → 補助簿なし(収益取引)
④ スカイ商会からの入金
問題文
スカイ商会に対する掛売上代金580,000円を、同社振出の小切手で受け取った。
仕訳
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 当座預金 | 580,000 | 売掛金 | 580,000 |
解説
- 小切手=当座預金 → 当座預金出納帳
- 掛回収 → 得意先元帳
⑤ ミントカフェからの返品
問題文
ミントカフェに掛けで販売した商品のうち、品違いであったため16,000円の返品を受けた。
仕訳
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売上返品 | 16,000 | 売掛金 | 16,000 |
解説
- 売上マイナス → 売上帳
- 売掛金減少 → 得意先元帳
- 商品戻り → 商品有高帳
まとめ
- 補助簿は「取引の種類 × 相手 × 支払方法」で判断する
- 同じ金額でも使う帳簿が違う
- 現金・手形・小切手・掛など、キーワードで見分けると迷わない
🐧ペンリー:「帳簿は“森の足跡”。お金がどの道を通ったか、きちんと記録しておきましょう。」
ロジカルで几帳面なIT会計士。補助簿の管理と仕訳の整合性にこだわる。